この年末年始、新宿梁山泊が年越し公演でおくる、唐十郎〈新作〉書き下ろし興行!

水の滴る芝居小屋の文芸部屋
人形の眼を持つ女の様々な物語が
風のほこりに舞い上がり、
黒い水溜まりに落ちて行く
過ぎて行く時代に、義眼の瞳は何を映す

2005年1222日(木)〜2006年14日(水)

於:下北沢ザ・スズナリ
前売3,500円/当日3,800円/
学生3,000円(劇団扱いのみ 受付にて学生証提示)
全席自由(整理番号付き)
『風のほこり』『楽屋2006』ペアチケット5,000円
 
2006年4月
右文書院より
「風のほこり」唐十郎+新宿梁山泊
の本が出ました!
→詳細
【公演日程】
開演 2005年12月 2006年1月
22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 1 2 3 4 5 6 7 8 9
14時            


       
   
15時                          
19時          
「風のほこり」公演/「楽屋」公演 *開場は開演の30分前、受付開始は1時間前です。
●STAFF     ●CAST  
舞台監督 村松明彦
田口加代
渡会久美子
照明デザイン 泉次雄(ライズ)
水守三郎
大貫誉
照明オペレーター 宮崎絵美子(ライズ)
奇々怪々一座の怪々をやる呑界
コビヤマ洋一/金守珍
舞台美術 大塚聡+百八竜
奇々なる面影
大久保鷹
振付 大川妙子
君枝
三浦伸子
劇中歌作曲

大貫誉

広島光
衣裳 近藤結宥花
湖斑
鳥山昌克(劇団唐組)
宣伝美術 梶村ともみ(画)
浅子
梶村ともみ
福田真一(デザイン)
高見刑事
米山訓士
制作 新宿梁山泊事務所
浪子の人形
 
   
ジュゴン
 
     
演劇的冒険の旅路の果てに
 
「風のほこり」を見逃すな!
堀切直人
室井 尚
 唐組の芝居は、横道が縦横に張りめぐらされた、錯綜たる迷宮の様相を呈する。ところが、名作「少女仮面」をはじめとして、唐十郎が他劇団の依頼で書き下ろした戯曲は、大胆に整理され、シンプルなまとまりをもつ。とりわけ、この「風のほこり」は、小さな劇場の小さな舞台を想定して書かれたものだけに、登場人物の数も少なく、密室の求心力、集中力が強い。
 唐十郎は本作で初めて、劇中に自分の母を実名でヒロインとして登場させた。この母が昭和五年ごろ、浅草六区の劇団「プペ・ダンサント」に脚本を売りこみに行ったが没にされたという実話をもとに、作者は、劇場前の水溜まりのある空地で、片目が義眼の娘の、メルヘン的想像力を携えての演劇的冒険の旅程をくり展げる。この旅路の行き着く果てに現われる、ラスト十五分間ほどの、義眼や水鏡のような死物が息を吹き返して甦ってくる、息を呑むようなスペクタクル・シーンに向けて、劇団・新宿梁山泊はドラマを分厚く、緻密に積み上げていくだろう。
 この夏、一ヶ月半に及ぶ過酷な韓国テントツアー「唐版・風の又三郎」を大成功のうちに終えた新宿梁山泊が、この冬初めて唐十郎の書き下ろし作品に挑戦する。
 昭和五年、自分の生まれる十年前の若き母・田口加代と浅草軽演劇全盛時代を題材とした、唐十郎渾身の最新作「風のほこり」がそれだ。
 水の中に光る義眼が暗闇の中からぼくたちの「水源」を照らし出す、この「生まれる前の母たち」の物語に、演出・金守珍はどのような思いとどのような覚悟をこめて挑むのだろうか? 状況劇場を離れ、新宿梁山泊を立ち上げてから18年。唐の代表作と紫龍テントを引っ下げ、父祖の地を巡ってきたばかりの金守珍は、劇団結成以来使ってきた演出名・「金盾進」を捨て原点に戻ることで、この新作に取り組む並々ならない決意を示している。作中ばかりではなく、それに関わる人々のいくつもの生の光が屈折し、乱反射する「水晶玉遊戯」のようなこの舞台を、胸をときめかせて待ちたい。

 状況劇場から独立して役者集団として新宿梁山泊を結して18年。金守珍はかねて切望した唐十郎の書き下ろし戯曲に、ついに挑む。
 舞台は昭和5(1930)年の浅草。東京の、というより東洋を代表する大都会だった浅草は、最先端の風俗がゆきかい、演劇や映画の一大中心地だった。しかし一皮むけば、暴力、貧困、セックスの横溢する魔都であり、『風のほこり』の舞台もそんな街の行き止まり、小劇団の水のたまった文芸部屋に設定される。
 今回はじめて唐十郎は、母親を実名で劇中に書く。二十歳で義眼の「田口加代」。『尻子の旅』という不思議な戯曲を書きつぎ、二人しかいない劇団「奇々怪々一座」をめぐる人間模様の中で彷徨うこのヒロインの道行きは、唐の現実の母親の物語と劇中のリアル、加代のつむぐ戯曲の世界の三層がよじりあわさるようにして進行していく。
 これだけでもわくわくするのに、天才的な義眼の細工師を唐は登場させ、眼球の物語を招きよせるのだ。眼球は発生学的には脳の一部で、「眼は心の窓」と言われる通りなのだが、眼を人間的にとらえる態度を笑いとばすかのように、加代の義眼の持主が人形でもあり人間でもあるという演劇的仕掛けをほどこす。人形と人間を往還する義眼は、どこに「継がれていく」のか。
 新宿梁山泊は二ヵ月近くにわたる『唐版 風の又三郎』韓国公演をやり終えてきたばかりだ。1993年の『人魚伝説』ソウル公演に続き内容的に充実した舞台は、韓国の観客から熱い支持を受けて成功裡に終わったが、<唐十郎>と韓半島を、結成以来劇団の主要テーマとして掘り下げてきたことがその背景にあるだろう。世にウェルメイドな芝居、等身大の物語が氾濫する中、この「持続する志」に、状況への瞋(いか)りを私は見出したくなる。金守珍と唐十郎の20年にわたる演劇的軌跡の交差に『風のほこり』は新たな章の始まりを告げることになるはずだ。
 数々の伝説の舞台を生んだスズナリに、昭和5年の浅草が、いま出現する。
 <まなざし>は、どのように継がれるのか。

樋口良澄(当日パンフより)


 唐十郎作品の上演ラッシュが続いた年の最後らしく、唐の原点がうかがえる舞台が上演中だ。唐がなじみの深い劇団に書き下ろした新作では、実の母親が若き日に人気劇団に戯曲を持ち込んだという実話から発想した。
 昭和初期の東京・浅草。芝居小屋の舞台下にある水浸しの部屋で、片目が義眼の加代は座付き作家の水守の指導で「尻子の旅」という戯曲を執筆していた。この二人に、母親の面影にとらわれた快優呑界、劇に注がれる「まなざし」の神秘を知る義眼細工師の湖斑らが絡んで戯曲が書き進められる。
 様々な挿話が迷宮のように交錯する唐の近作に比べ、構造はシンプルで、その分、彼独特の詩的な魅力が味わえた。真珠と目、ドブと水、風とほこり、母親といった言葉が共鳴し合って豊かな像を結ぶ。
 例えば加代が戯曲につづった「きみの深海に眠る真珠のような目が好き」という一節。真珠を育てた後に捨てられる親貝、深い海底の神秘を知る黒真珠へとイメージは奔放に膨らみ、そのうちに唐の母親への思慕や、劇作家としての「まなざし」の起源を探り当てようとする思いが浮かび上がる。
 新宿梁山泊は夏に「唐版 風の又三郎」の韓国ツアーを終えたばかりで、どの役者も劇場を揺るがすようなスケール大きな演技や声の張りを見せ付けた。一方、演出の金守珍はぬくもりを感じさせる繊細な照明を生かして詩的な場面を次々と作り出す。
 終盤、黒く濁った水たまりに、風に運ばれた脚本のページがはらはらと舞い落ちる。「キラリ光る一個の泡」を紡ぎ出すために奮闘した当時の演劇人の思いが、暗い時代の波にのみ込まれる様子を象徴しているようで心に残った。

祐成秀樹
2005年12月28日(水)読売新聞夕刊より

日本を代表する不朽の名作、清水邦夫作『楽屋』を金守珍が新宿梁山泊流の新演出でおおくりします。
2006年16日(金)〜9日(月)
於:下北沢ザ・スズナリ
  前売3,000円/当日3,300円/
学生2,500円(劇団扱いのみ 受付にて学生証提示)
全席自由(整理番号付き)
『風のほこり』『楽屋2006』ペアチケット5,000円
●STAFF     ●CAST  
舞台監督 村松明彦
女優A
池田実香
照明デザイン 泉次雄(ライズ)
女優B
沖中咲子
照明オペレーター 宮崎絵美子(ライズ)
女優C
梶村ともみ
舞台美術 大塚聡+百八竜
女優D
草野小夜架
振付 大川妙子
プロンプター
目黒杏理
音響

N-TONE

楽士
閔栄治
衣裳 近藤結宥花
U-hi
宣伝美術 梶村ともみ(画)
 
福田真一(デザイン)
 
制作 新宿梁山泊事務所
 
   
 

おかげさまを持ちまして、『風のほこり』『楽屋2006』公演は好評の内に全日程終了いたしました。
年末年始のお忙しい中、劇場に足をお運び下さいました皆様、本当にありがとうございました。

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