死んだ恋の人をたずねてどこへ行く、又三郎─
あの歌声を響かせて、ガラスのマントに風吹けば、
闇のトビラが、今、開かれる!

東京
新宿・花園神社/6月29日(日)〜7月6日(日)
〈予約お問合せ〉新宿梁山泊事務所 03-3385-7188
愛知
田原町地域文化広場内・はなのき広場/7月12日(土)・13日(日)
〈予約お問合せ〉タハラジャ(渡会)0531-22-2438
  「ヨルカケ」同時特別上映会あり!
大阪
扇町公園/7月19日(土)・20日(日)
〈予約お問合せ〉TRASH 06-6352-3661
いずれも特設紫テント興行/東京,愛知,大阪公演 毎夕7時開演
新潟
豊栄市総合体育館駐車場/7月26日(土)・27日(日)
  <予約お問合せ>新潟・市民映画館シネ・ウインド 025-243-5530
特設紫テント興行/新潟公演のみ毎夕6時半開演
◆物語◆
 東京の下町で二人の男女が出会う。精神病院から逃げてきた青年「織部」と宇都宮から流れてきたホステスの「エリカ」。二人はこの物語の中では恋人同士ですらなく、ただ、『風の又三郎』のイメージを介して結びつくもろい関係。
 汚濁した世間で生きていくことができずに病院に収容され、それでも、自分を連れ去る風の少年に憧れる織部は、その面影をエリカの中に見い出す。エリカは自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探す道連れとして、この純真な青年を利用する。探し当てた恋人はすでにこの世の人ではなく・・・・。
 ガラスのような精神を抱え、傷つきながらもひたすらに、自らの「風」である女を守ろうとする青年と、いまわしい血の記憶に翻弄させる女との、恋よりも切ないものがたり。
●STAFF     ●CAST  
舞台監督 村松明彦
教授(元宇都宮少年自衛隊航空分校長)
鳥山昌克(劇団唐組)
照明デザイン 戸谷光宏
乱腐
辻孝彦(劇団唐組)
照明オペレーター 泉次雄
淫腐
島野雅夫
上田弘之
珍腐
松岡哲永
舞台美術 大塚聡+百八竜
織部
大貫誉
殺陣

佐藤正行

エリカ
近藤結宥花
振付 大川妙子
夜の男
コビヤマ洋一
劇中歌作曲 安保由夫
風の商人〜宮沢先生
大久保鷹
大貫誉
老婆
渡会久美子
音響 N-TONE
大学生
尹秀民
宣伝美術 梶村ともみ(画)
桃子
三浦伸子
福田真一(デザイン)
梅子
梶村ともみ
制作 新宿梁山泊事務所
死の青年〜高田三郎三曹
原 昇
制作協力 (有)クルージン
死の少年
岩村和子
協賛 クラレンス
航空兵1
上原弘之(劇団1980)
航空兵2
湯澤俊典(劇団1980)
航空兵3
八代定治(劇団1980)
航空兵4
小出康統(劇団1980)
航空兵5
則松徹(劇団1980)
航空兵6
堀田誠
女医
渡会久美子
看護婦・尼
沖中咲子・草野小夜架
池田実香・古澤真弓
阿部由美・任里英
森透江
料金 全席自由/整理番号付 前売=3,500円 当日=3,800円
 学生=3,300円(劇団扱いのみ・受付にて学生証提示)
開演は毎夕7時。開場は開演の20分前。受付開始は開演の1時間前より。

 1974年、東京・夢の島。そこに突如出現した真紅のテントで1本の芝居が上演された。整理券を待つ長蛇の列。待ち時間が5時間をゆうに超えるというのに当日券を求めて続々と増えつづける観客。今となっては伝説としてしか耳にすることのできない唐十郎率いる「状況劇場」の新作公演だった。その芝居を荒涼とした風に翻る"紅テント"で実際に観たという年長者に出会うたび、いつも悔しい思いをしてきた。「根津甚八が叫び、小林薫の台詞に観客が沸いてね」と語るその日の体験は、まるで幸福な歴史的事件の生き証人のそれだったからだ。
 その作品『唐版 風の又三郎』が帰ってくる。宮澤賢治の童話をモチーフに、奇才唐十郎のイメージが奔放に紡ぎ出した作品だ。汚れきった世間と折り合いをつけきれず病院に収容され、それでも自分を連れ去る風の少年を待ちつづけるひとりの男。自衛隊の練習機を乗り逃げした恋人を探すひとりの女。ガラスのような精神を抱え自ら「風」と信じる女性を守ろうとする青年と忌まわしい血の記憶に翻弄される女性との物語。上演するのは「新宿梁山泊」。かつて「状況劇場」に所属し"快優"と呼ばれた金盾進が演出を務める。映画『夜を賭けて』を監督し話題になった人物でもある。過去の作品では放浪する家族を演じる役者たちを本物の筏に乗せて遥か海の彼方から登場させたり、終幕でテントの壁を振り落とし、そこに広がる現実の風景そのものをテントの中の芝居の世界に取り込んだりと劇的な演出で観客の度胆を抜いてきた。自らのDNAでもある唐十郎の作品を"紫龍テント"でどう料理するのか注目したい。
 その日、その場所で、その芝居を観たという特権的な体験は、生涯にわたって幸せな時代の証人たることを約束してくれる。29年前、夢の島であの芝居を目撃した者たちが今なおそうであるように。
三名智輝(萬文筆家)
アシェット婦人画報社ヴァンテーヌ2003年7月号より