新宿梁山泊第35回公演
ほこり
作 唐十郎/演出 金守珍

水の滴る地下の文芸部屋
夜ごと哀しく響くジュゴンの声
人形の瞳を持つ女の語る物語が
風のほこりを舞い上げる。
唐十郎、初の実母を題材とした、
新宿梁山泊書き下ろし作品。

●九州公演 於:北九州芸術劇場 小劇場
11
3日(土)15:00/19:30
114日(日)15:00
●名古屋公演 於:七ツ寺共同スタジオ
1121日(水)・22日(木)19:30開演
   23日(金祝)15:00開演
●大阪公演 於:アトリエS-pace
1127日(火)〜29日(木)毎夜19:30開演
──開場は開演の30分前──

前売3,500円/当日3,800円/
学生前売2,500円/学生当日2,800円
(劇団扱いのみ 受付にて学生証提示)
全席日時指定自由席(整理番号付き)

●登場人物
田口加代…渡会久美子

浅草玉木座の劇団〈プペ・ダンサント〉に、脚本を売りこみにくる。舞台下にある文芸部屋の水守に指導される。この昭和5年に弱冠二十歳。

水守三郎…大貫 誉
水が溜まってる部屋(半浸水の)でゴム長はいて、カーボン紙はさんだ台本台に、笑いと真心こめた物語を書こうとあがく。
〈奇々怪々一座〉の怪々をやる呑界(どんかい)…コビヤマ洋一
〈プペダン〉の主要チームで、豪快なリーダーだが、一座は二人しかいない。
奇々なる面影(おもかげ)…梶村ともみ
呑界が恋に狂って脱線する度に、母の面影となって「呑(どん)ちゃあん」と呼び止める。ジュゴンの言葉を解する。
君枝…三浦伸子
加代が通う七重(ななえ)医院の看護婦で、浅草水族館の二階にある〈カジノ・フォーリー〉に入りたがっている。
(くら)…米山訓士
細工師・湖斑(こむら)の走り使いをやっている。根が、さほど暗くないことは「金色夜叉」の貫一を演じて分かる。
浪子の人形
奥山の小屋掛けで立っている。浅草十二階下の町の記憶を秘めた仇花。
湖斑(こむら)…鳥山昌克(劇団 唐組)
この人に会うと、誰もが筋肉のこむら返りを起こすという。加代が住んでいる根岸町の長屋に、かつて住んだという義眼の細工師である。
浅子…沖中咲子
水守三郎と同棲したことがあるが、今は別れて他の舞台役者とつき合っている。水守と同居前には、リリィという踊り子とも恋をしていたこともある。
ジュゴン

〈カジノ・フォーリー〉の階下にある水族館に住む。困った時の面影の話し相手。フォルス(底力)をもつが、出てこないで、面影によって語られる…。

高見刑事…金 守珍

●STAFF
照明 泉次雄(ライズ) 照明オペレーター 古賀裕一郎(ライズ)美術 大塚聡+百八竜
振付 大川妙子 衣裳 近藤結宥花・沖中咲子 小道具 広島 光
劇中歌作曲 大貫誉音響 N-TONE 音響オペレーター 目黒杏理
宣伝美術 梶村ともみ(画) 福田真一(デザイン) 制作 新宿梁山泊事務所
●名古屋公演 於:七ツ寺共同スタジオ   ●大阪公演 於:アトリエS-pace
名古屋市中区大須2-27-20
地下鉄鶴舞線大須観音駅下車、2番出口より約150m直進、西大須交差点を左折し約100m直進、いとう医院を左折、約20m。
大阪市城東区成育2-5-4
京阪野江駅東口より線路沿い北へ3分。地下鉄谷町線野江内代駅1番出口より東へ徒歩10分。大阪駅よりJR環状線「京橋」→京阪線「野江」(京都方面普通電車で一駅)
 
演劇的冒険の旅路の果てに
堀切直人
 唐組の芝居は、横道が縦横に張りめぐらされた、錯綜たる迷宮の様相を呈する。ところが、名作「少女仮面」をはじめとして、唐十郎が他劇団の依頼で書き下ろした戯曲は、大胆に整理され、シンプルなまとまりをもつ。とりわけ、この「風のほこり」は、小さな劇場の小さな舞台を想定して書かれたものだけに、登場人物の数も少なく、密室の求心力、集中力が強い。
 唐十郎は本作で初めて、劇中に自分の母を実名でヒロインとして登場させた。この母が昭和五年ごろ、浅草六区の劇団「プペ・ダンサント」に脚本を売りこみに行ったが没にされたという実話をもとに、作者は、劇場前の水溜まりのある空地で、片目が義眼の娘の、メルヘン的想像力を携えての演劇的冒険の旅程をくり展げる。この旅路の行き着く果てに現われる、ラスト十五分間ほどの、義眼や水鏡のような死物が息を吹き返して甦ってくる、息を呑むようなスペクタクル・シーンに向けて、劇団・新宿梁山泊はドラマを分厚く、緻密に積み上げていくだろう。

2006年4月右文書院より「風のほこり」唐十郎+新宿梁山泊の本が出ました!→詳細

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